経済破産宣言をしたインド洋の真珠 スリランカを訪問してきた感想と日本の近い将来


The Pearl of the Indian Ocean


日本語にすると、『インド洋の真珠』。スリランカは自然が美しいことから、英語の記事でも実際にそのように呼ばれている。スリランカはあまり都会ではなく、自然が多い国だ。人口は約2000万人。台湾と同じくらいだが、一人あたりの経済規模は台湾の10分の1もない。首都コロンボですら、夜8時をすぎると、多くのレストランはお店を閉めるし、街は暗くなる。旅行先としては、アジア人からするとさほど有名な場所でもない。

素晴らしい世界遺産と世界でも稀に見るほどのフレンドリーな気質は、ヨーロッパ人に向けられることが多い。スリランカを観光で訪れる国は、コロナ前とコロナ後では大きく変わった。中国人観光客をあてにしていたスリランカだが、コロナで中国人は来られなくなった。観光産業が重要なスリランカは、その代替として、ロシア人とウクライナ人に目をつけ、両国の入国に関するビザ要件を緩くした。そのため、現在最も多い入国者は、ロシア人であり、その後はウクライナ人、イスラエル人、ドイツ人、イギリス人などが続く。スリランカは南アジアに位置するが、アジア人はもともと観光客としてはさほど多くない。日本人、韓国人も、2022年の政変以降はばったりと来なくなった。お隣のインドからは、ある程度の観光客は来るようだが、実際に消費するお金の額を考えると、ヨーロッパ人に熱い視線が注がれている。街を歩いていればロシア語が勉強できるくらい、確かにロシア人が多かった。ロシア語独特の、果実を口で潰しているような発音がよく聞こえる。ロシア人は戦争の影響もあり、数ヶ月単位、いやもはやロシアには帰らないレベルで滞在している人も多い。イスラエル人やドイツ人も数ヶ月単位の滞在を問題としない。

2022年7月、対外債務を支払えないとして、スリランカは経済破産を宣言した。

紅茶・観光に大きく依存したスリランカ経済は、コロナで観光収入が激減することに耐えられなかった。中東からオイルを購入するお金もなく、一時はスリランカで取れる紅茶葉と中東からのオイルを物々交換する協定も結ばれた。混乱を極めた生活は、IMFから3000億円を一時的に借りることで、現在は通常通りの生活が送れているように見えた。停電が一日に1時間程度起こるが、ガソリン不足などの混乱は見られず、表向きに関しては、市民生活は何も変わらないように見えた。人が行き交うショッピングモール、レストラン……旅行者の私からしてもさほど変化は感じなかった。


『国家財政が破産をしても、庶民生活はさほど変わらないものなのだろうか?』


確かに一見は変わらなかったが、出会う人々と話をしていると、彼らの多くは『No Money』を頻繁に口にする。首都コロンボで最も多く人が集まる場所のGalle Face Greenに集まるスリランカの人々は友達と楽しそうに談笑し、笑顔で満ちている。しかし、路上に寝ている人もいる。歩いていると、『金くれ、金くれ』とせがんでくる人も多い。今までどこの国に行っても、ここまでお金をせがまれることはなかった。屋台のおばちゃんも、『金が無い。それが唯一の問題だ』という。スリランカ人は外国人を見ると話しかけている陽気な人が多い。私はショッピングモール前で座ってローカルと一緒に談笑していたので、私から彼らに、『外は暑いだろう。ショッピングモール内のカフェでも行ったらどう?』と聞くと、『カフェで飲む金が無い』と言っていた。

スリランカ庶民の平均月収は150USD程度だ。優秀なスキルを持った人は、300USD位もある様子。2022年からの世界的なインフレでスリランカ国内の物品の価格は大きく上昇した。そして、米国の金利上昇と経済危機により、下記のようにスリランカ通貨ルピーは大暴落をした。80%近く下落をしているので、多くの人が多額の財産を失っただろう。その通貨の暴落が、輸入品の価格をも大幅に引き上げた。手にできる収入は変わらないのに、支出は大きく増えた。目に見えないところで、庶民の生活は厳しくなっているのは感じた。


『あの日以来、いろいろ難しくなったわ』

バス移動の際に、隣の席に座っていたスリランカ人女性は言っていた。

『多くの人が、外国で働くことを望むようになった。私も今の経理の仕事の資格を取ったら、他の国で働きたい』


スリランカも基本的に多くの人が英語を話せる。また、スリランカの大学を卒業すると、コモンウェルスの国にありがちだが、同時にイギリスの学位がもらえる。スキルが高ければ、抜け出せるチャンスは有る。英語が苦手で、かつ日本国内でしか通用しない資格しか持っていない日本人よりも、スリランカの人々は、外の世界に出る可能性は高いかもしれない。(国籍はおそらく若干不利だけども)


外国人旅行者からすると、スリランカ・ルピーの通貨の安さは魅力だ。世界的なインフレにより、現地商品の価格は上がっているが、安いルピーで換算すると、ずいぶん安く感じた。私は10日滞在したが、食費・ホテル・移動費を合計しても、あまり多くのお金を費やした記憶はない。

タイ・ベトナム・インドネシアなどの東南アジア諸国は物価が安いことで長年知られてきたが、それらの国よりも遥かにスリランカの商品は安く感じた。ホテルの価格も、東南アジア諸国よりも一段二段と安く感じた。

当然スリランカの人々もそのことを理解しているため、『外国人価格』を高めに設定する。これには、多くの外国人も不満を隠さない。


実際に、経済破綻をした国を訪問するのは初めてだった。


  • 治安は?人々の生活は荒れていないだろうか?
  • ガソリンなどは問題なく供給されており、移動に支障はないだろうか?
  • 停電などは大丈夫だろうか?


様々なことを考えたが、スリランカ人の友人と話をしていて、今の時期なら大丈夫だという意見を聞いたため、スリランカを行きを決定した。実際に上記の問題は何一つ顕在化しなかった。普通と何も変わらない日常だった。その点では、私はラッキーだった。しかし、友人の話によると、今の時期は良いが、2023年3月から選挙が行われる可能性があるため、また不安定になる可能性がある……とも聞いた。確かに、選挙が起きることによって、何かが起きる可能性は、複数の人が示唆していましたね。もし3月以降に旅行を計画されている方がおられましたら、少し状況を見たほうが良いかもしれませんね。


今回の経済破産をした国の人々がどういう暮らしをしているのか?についての個人的見解は、

『表面上の人々の生活は、破産前と破産後もさほど変わらないが、実際の財布の中身はなくなってしまう』


という結論に到達したように見える。スリランカの人は海外旅行をしたことがない人も多いが、今では国内移動での旅行すらもお金の問題から難しくなったとも聞いた。


しかし、人の一生で何が最も大切なものなのかに関しては、スリランカの人々を笑顔を見ていると、金ではない別のものなのだということも分かった。


そして、私はなぜ破産をしてしまった国を訪問したかったのか? それは、近い将来の日本人の生活を早めに見ておきたかったからだと思う。スリランカとはずいぶん形は違うと予想するが、日本に住む日本人は、将来非常に厳しい経済的状況になるでしょう。見て見ないふりはできるが、避けることにはならない。それがゆっくり来るものなのか?急激に来るのか?それは分からないが。

多分その頃の日本も、今のスリランカと同じように、

『金が無い。金が無い』と発言する人は増え、海外での仕事を希望する人は増えると思いますが、表面的な社会そのものは特に変わらないことでしょう。

それが分かっただけでも、今回の旅の収穫だった。もちろん、素晴らしい仲間との出会い、美しい観光の体験もあったのだが。


しかし、スリランカの人々は、彼らのお金を盗んだ人間を許さなかった。デモを起こし、首謀者をシンガポールへ追い出した。そこは立派だと思う。


スリランカの人々は、とても心優しい方が多く、フレンドリーだ。場所によってはあまり治安が良くない場所もあるのだが、基本的に治安は良い。たとえ経済破綻をしていようとも、だ。Scammerも多いが、そんなにしつこくはない。そして仏教国のため、日本人とは宗教的な行動も比較的近い。


すぐに経済的に上向くことは難しいだろう。スリランカ全体としては、東南アジア諸国よりも10年、20年は遅れているように見える。経済の喉元も、すでに中国の支配下に落ちているようにも見え、独立国としての立場も危うく見える。インフレも前年度比50%と、驚くべき速さで急激に進んでいる。

引用:https://www.cbsl.gov.lk/en/measures-of-consumer-price-inflation


それにともなって定期預金金利も30%に達している異常事態だ。


しかし、私は多くの素晴らしいスリランカの人々に出会ってきた。彼らの生活が向上することを祈っている。

ちなみに余談だが、The Pearl of The Orient、『東洋の真珠』と呼ばれている島もある。マレーシアのペナン島だ。両方とも、イギリスに統治されていた歴史があり、コロニアル様式の建物は未だに残され、多くは政府庁舎として現在も利用されている。The Pearl of The ….. という呼び方は、当時のイギリス人の(若干の上から)目線からつけたものかもしれない。


-コロンボ最大のショッピングモール One Galle Face Mallにて-




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